ここ数年で姫路を訪れる外国人が本当に増えました。特に姫路城がリニューアルされてからは「日本人より多いのでは?」と感じることも。そんな外国人観光客の間で姫路駅新幹線ホームが密かな人気スポットになっているようです。初めて聞いたときには、何か珍しいものがあるの?と不思議に思いました。
どうやら彼らのお目当ては高速で通過する新幹線だそうです。新幹線は姫路駅より東は270キロ制限、姫路以西は300キロ制限と姫路駅を境に最高速度が変わり、ダイヤの関係で300キロで通過する新幹線が一番多く見ることができるので、姫路駅ホームが絶好のスポットなんだとか。
新幹線ホームに行くだけなら入場券140円で2時間OKなので、ちょっとした時間潰しにもいいですよね。
その新幹線のホームですが、姫路駅は他の駅と違った造りになっています。
普通のホームはこんな形です。
そして姫路駅はこんな感じ
ホームがひとつ多いのです。普通なら上り用と下り用の2つでいいはずですが、姫路駅にはもうひとつ3つ目の13番ホームが存在します。でも、ほとんど使われていないホームなので、「このホームから乗った」「このホームに降りた」という人はほとんどいないと思います。普段から姫路駅を利用している人でも、「このホームは何のためにあるの?」という事すら気にしたことが少ないと言っていいほど存在感のないホームです。
ところで新幹線の駅ですが、同じ近畿を見てみると滋賀には米原駅、京都には京都駅、大阪には新大阪駅と1つの県に1つの駅となっています。が、兵庫には新神戸駅、西明石駅、姫路駅、相生駅と4つもありますよね。
東西に長いということもありますが、東海道新幹線開業当時、駅と駅の間隔は平均約40キロメートルなのに、兵庫県だけは20キロメートル。単に東西に長いだけが理由ではなさそうです。意図的に造られています。
有力な政治家が、相生と西明石に無理矢理駅を作らせた?という話も聞きますが、調べてみると、姫路駅の13番ホームと兵庫県に4つも新幹線の駅があることは関係があるみたいです。
実は、1964年の東海道新幹線開業当時、新幹線の24時間運行が計画されていました。つまり昼間だけでなく夜間も走らせるつもりだったとか。
新幹線は在来線より高速で移動するため、線路の傷みも激しく、頻繁に保線(メンテナンス)をしないといけません。もちろん昼間に作業をするわけにはいかないので、夜間に上りと下りの2本ある線の片側を保線し、もう片方の線路で運行する計画だったそうです。単線運行になるので、その場合、途中で行き違いをさせるために、もう一つ待機用のホームが必要になります。地方のローカル線は単線運行で、駅で上下線の列車をすれ違いさせるパターンが多いですが、それと同じですね。
そして、姫路は東京と博多のちょうど中間地点なので、ここに待機ホームを作ることになったのですが、それが姫路駅13番ホームというわけ。
また、すべての列車を姫路駅でさばくのは困難だったので、その前後に退避用の駅として、西明石駅と相生駅が建設されたということみたいです。
ところが、姫路駅に3つ目のホームが完成し、次は西明石駅か相生駅の工事にとりかかろうというタイミングで、走行による騒音が社会問題になって、夜間運行構想は立ち消えになりました。そのため相生駅や西明石駅には夜行用のホームは作られませんでした。試験車両も完成していたとのことなので、国鉄(当時)は本気で24時間運行を目指していたみたいですが。
今考えると無茶な計画だと思うのですが、高度経済成長期にはヒト・モノ・カネの動きが活発だったので、姫路駅13番ホームと西明石駅、相生駅は「とりあえず何でもやっちゃえ」とエイヤっと作った壮大な計画の名残ということもでき、それだけ日本は元気だったということなんでしょうね。
現在、西明石駅と相生駅は、遅い列車を速い列車が追い越すための退避駅として使われています。列車を高速で走らせようとするほど、先に発車した遅い列車にすぐに追いついてしまうので、退避駅はたくさん必要です。広島や山口、静岡などに駅が多いのもこういう理由らしいです。そういえばのぞみ運行開始当時、のぞみは姫路駅には停車しませんでしたよね。ひかりやこだまが姫路駅に停車しているときにのぞみが通過していました。 ただし、姫路駅は他の退避駅とは背景というか事情が違うと。
ところで、夜行新幹線計画がなくなったので13番ホームは必要なくなったわけですが、「せっかく作ったのに、たまに使わないと線路が傷む」という理由で1日数本だけ使われています。
このエヴァンゲリオンの車両(2018年12月追記:2018年6月からハローキティ仕様になっています) は珍しいので人気ですが、
13番線に停車するレールスター。こちらもレアですよ(たぶん)。
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