熱中症予防に「手のひらを冷やす」

環境省では熱中症予防の指針として、「摂氏35度以上を『運動は原則中止』として『特別な場合以外は運動をしてはならない。特に子どもの場合は中止すべき』と定めています。

環境省 熱中症予防情報サイト
http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

そんな危険な気温35度以上の炎天下の中、連日行われるのが夏の高校野球。選手はまだ屋根とスポットクーラーのあるベンチで休息をとれますが、スタンドのブラスバンドや応援団は日陰がなく、熱中症で倒れるケースも多くなってきています。2018年の数字を見ると甲子園期間中、343人が熱中症で倒れたようです。運営側も対策は急務です。

そんな中、最近注目されているのが「手の平を冷やす」という方法。高野連も試験的に採用したところ、明らかな効果が得られたという新聞記事がありました。

これまで「大きな血管が通る首やわきの下、足のつけ根( 鼠径部そけいぶ )を冷やす」のが常識と思われていましたが、実は手のひらや足の裏、ほおを冷やすほうが、それよりも効率的だということがわかってきました。 脳や心臓に近い部分が冷やされると、脳は「体が冷えてきた。体温を上げなくては!」と判断し、深部体温が下がらないように働きかけてしまいます。身体は冷えに対して恐怖を持っているので、当然の防御反応と言えます。

 

 

手のひらにはAVA(Aeterio Venous Anastomosis、動静脈吻合[どうじょうみゃくふんごう])という、体温調節のための特別な血管があります。普段は閉じていますが、暑くなると開通して放熱し体温を下げようとします。寒いときはこの中を勢いよく血液が流れることにより、体温を上げようとします。 拡張したときの直径は毛細血管の約10倍と結構太い血管です。AVAは手のひら以外に足裏や頬(ほほ)にも多く存在します。


マッサージ世界のセラピストの間では、末端が冷えている人をとりあえずポカポカさせるためには、AVAに働きかけるといいというのは知られています。一般の方でも焚火に手のひらをかざしたり、足だけ温める足浴で全身が温まるということは、経験則としてご存知だと思います。逆に、夏の暑い日に足を水につけると、全身が冷えて涼しく感じるのも、AVAが関係しているということですね。

いろいろな温度を試した結果、15度程度に冷えたペットボトルを握るのが一番いいそうです。冷やすのだからできるだけ温度は低い方がいいだろうと、例えば保冷剤などを直に手に持つと、冷え過ぎて血管が縮小してしまい、身体は逆に体温を上げようと働いてしまうので逆効果なのだそうです。

スポーツ科学の分野では、運動前や運動中の手のひら冷却によって、パフォーマンスが上がるという研究も数多く報告されているようですし、米軍も中東の砂漠に展開する部隊が熱中症予防に採用しているようです。軍隊で使われるぐらいなので、効果は抜群だとみて間違いないでしょうね。

熱中症を発症してしまった時の対処は「大きな血管が通る首やわきの下、足のつけ根を冷やす」で変わりありません。手のひら冷却はあくまで「予防として有効」ということです。

 

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