禁煙したい人に立ちはだかる壁
たばこ産業の「平成26年全国たばこ喫煙者率調査」によると、2015年度の日本の紙巻たばこの販売数量が1833億本と、1996年から約5割減ったみたいです。
今や喫煙禁止は世界的な潮流といってよく、政府も2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた受動喫煙防止対策として、たばこ税の増税により、たばこ1箱の価格を1000円以上に引き上げるつもりとか。さすがに「そこまで上げられたら禁煙を考える」という声もチラホラ。

製薬会社ファイザーの調査によると、タバコの発ガン性や高血圧、肌荒れ、疲れやすい、のどが痛くなるなど、体調が悪くなるとかといった健康上の理由から、喫煙者の6割が禁煙を考えた事があり、「1年以内に禁煙したい」という人を含めると、喫煙者の約7割が禁煙したいと思っているようです。実際に禁煙に挑戦したひとは4人に1人、そのうちの9割は失敗しているのが実態ということも明らかになりました。
タバコを吸っている人が100人いたとして、禁煙したいと思っている人は70人。実際に行動に移したのは20人弱、そして禁煙に成功した人は1人か2人ということになりますね。タバコを断つということは相当難しいことだと言えそうですね。




禁煙が難しい最も大きな原因として、タバコを吸わずにいられなくなる物質があること。その物質こそが皆さんご存知のニコチン。ニコチンとは、タバコの葉の中に含まれる植物毒の一種。本来毒性をもつ物質なので、注意を促す意味でタバコの箱に含有量が明記されていますよね。ニコチンはタバコの煙とともに気管支を通って肺の中の肺胞にまで送られます。肺胞の中の毛細血管から体内に取り込まれます。
ニコチンは、脳内で情報を伝える神経伝達物質、アセチルコリンの分子構造とよく似ているのです。そのため免疫が働かずに脳の神経細胞内への侵入を簡単に許してしまいます。
通常外部から入ってきた物質は、異物として免疫機能が脳内への侵入を食い止めるはずです。初めてタバコを吸ったとき、高温の煙が肺を焼きますし、煙にむせてしまい、なかなか肺に吸い込めなかったはずだと思います。最初は身体の防衛反応と免疫機能が働きますが、脳神経をある意味乗っ取ってしまうので簡単に無効化されてしまうのです。
このニコチンは神経細胞への刺激が極めて強いため、独特の刺激に慣れてしまうとニコチンの刺激なしには満足しないカラダになってしまいます。この刺激がタバコの中毒の原因で、ニコチン中毒のメカニズムです。
よく言われるところのニコチン中毒とは、ニコチンの依存作用のことを言うわけですね。



禁煙に挑戦した喫煙者のうち禁煙が続いた期間が半日未満5.6%、半日から1日未満10.8%、1日から3日未満22.2%、3日から1週間未満17.1%となり、禁煙開始後1週間で過半数の人が挫折しているそうです。
ファイザーをはじめ、いろいろな機関が行った禁煙に失敗した人へのアンケートをみると、どうやら1日目、2日目から3日目、1~2週間後、1ヵ月から3ヶ月後の4つの期間に大きな壁があるといえそうです。壁の数が多いですね。この壁の数の多さが禁煙の難しさにつながるのだと思います。
ですが、この壁の存在を知っているのと知らないのとでは成功率も変わってくると思います。


●禁煙1日目
脳がニコチンのある状態に慣れると、なくなったときニコチンを取り戻そうとする喫煙欲求が起こります。喫煙後、体内のニコチンが半分になるのにかかる時間は約2時間。この頃から脳がニコチンの効果を強く求め始めます。6人に1人はこの欲求に負けてしまいますが、この欲求は2~3分といった短時間でおさまるので気を紛らすことで乗り切っていただきたいです。



●禁煙2日目から3日目
このころ血中ニコチン濃度が下がります。ニコチンの血中濃度は喫煙後10秒以内でピークに達し、2時間で半分に減ります。朝、目覚めの一服をしたくなるのは血中ニコチン濃度が睡眠中に激減するのが原因だったりするのですね。禁煙をするとニコチンが減って、その効果もなくなるので脳が1日目より強く刺激を求めます。このときの欲求は数日間続くようです。2割の人がこの時期に挫折してしまうほどの強い欲求なので、一番大きな壁と言えそうです。この壁を乗り越えると味覚の変化や食欲が出てくるなどの大きな変化が見られます
これはニコチンがなくなり胃腸の働きがよくなるからなのですね。禁煙後2日ほどで舌の表面や花の粘膜のタールがなくなります。禁煙した人に共通する感想として「薄味でもおいしく感じられるようになった」というのがありますが、こういうことですね。また、ニコチンは胃腸の粘膜の血流量を減らし消化・吸収能力を悪くします。食後に喫煙したくなるのは消化するために血液が胃に集中するから。血流が局所的になると不快感が増大します。ニコチンは胃に集まる血液を減らしてくれる(血行不良を起こす)ので食後にタバコを吸いたくなるわけです。禁煙することで胃腸も本来の消化吸収能力を取り戻します。なので食欲が増した結果、「体重が増えてしまった」ということが起こるわけですね。

●禁煙1~2週間後
禁煙に失敗した人が一番多い時期です。禁煙開始直後は強い意志が働いているため喫煙欲求の衝動を抑えることができます。禁煙に自身を持ち始めた1週間を過ぎると緊張感がなくなり、脳の欲求に負けてしまいがちになるのだと思います。この壁はそれほど困難なものではなく、本人の意識次第といえそうです。
この時期を乗り越えると喫煙欲求が起こりにくくなり、自律神経が本来の働きに戻り血液循環が改善されます。この結果、心肺機能が向上し、たとえば階段の上り下りなど軽い運動をしても呼吸が乱れることが少なくなるようです。



●1ヵ月から3ヶ月後
最後の壁です。この頃になると身体は完全にニコチンが必要ない状態になっているはずなのですが、脳には喫煙していたときの記憶が残っていることがあります。心理学の世界では「行動記憶」といいます。要するに癖ですね。
例えば、メガネをかけていた人がコンタクトに変えた場合でも、ふとしたときにメガネを探したり、かけ直すしぐさをしてしまったりしてしまうことがあります。また、引っ越したときも、つい引越し前の地域の天気を見てしまったりしてしまったり。
禁煙前にタバコを吸っていた状況が、ふとしたときに思い出されて喫煙欲求が起きてしまうのですね。特にタバコは臭いを伴います。「プルースト効果」といって、嗅覚から思い出される記憶は他の感覚器からの刺激よりも情動的な反応を引き起こす、ということも分かってきています。お酒の席で周りや目の前の人が吸うタバコの臭いで、つい喫煙していたときの記憶がフラッシュバックを起こし、無意識にタバコに手をつけるといったケースが多いようです。


乗り越えるべき壁の存在をきちんと認識することで、心の準備や対策を考えることができると思いますし、一度ですべての壁を乗り越えるのではなく、何度も挑戦してみる事が大事だと思います。頑張ってください!




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